「青い鳥の夢。」



『・・・・・・・・・・鳥を、探しているの。』

『私だけの、青い鳥を―――――・・・・。』



そう言った、黒い服の鳥篭の少女。
そしてその少女は今、自分の目の前に佇んでいる。
「・・・・・・・おや」
さして驚いてもいないが、驚いたような声を出す仮面紳士。
少女はそれを気にも止めず、無表情で彼を見つめる。
「・・・・久し振り」
「えぇ、お久し振りです。・・かごめ。」
短い挨拶を交わし、その後にかごめは彼に近付いた。
彼は初めて出会った時の様に口元に薄い笑みを浮かべたまま彼女を見つめている。
「・・・・こんな所で何をしているの?」
「この近くに、私の友人が住んでいるのですよ。昔からの知り合いでね。透明人間なのですが。
・・・・言うなれば古株、でしょうか?」
くすくすくす。・・・・くすくすくす。
再び笑う。
「・・・そう。あなたにも友達が居たのね」
「えぇ。一応は。最も、殆どはこの世には居ませんが」
「・・幽霊ですものね」
「そうですね」
くすり。自分の事を、他人事のように笑って話す彼。
そこが今の彼と、人との相違点だろう。
「貴女こそ、この様な場所で何を?」
今2人が居るのは人が近付く事自体が珍しい程の深い森。
ただ、日の光は程良い程に射していて、気温も丁度良いものだった。
「・・・・・特に列記とした理由はないわ」
ただ、何となく。あなたに会える気がした。・・とは決して言わないけれど。
詩を作るのにも良いから、ぽつりと付け加える。
それでも、人との干渉を最小限にしている彼女が自分からジズに話し掛けて来ると言う事は、
少なからず心許されているのだろう。
「成る程」
くすくすくす。・・・・くすくすくす。
笑いは心地良い煩さで木々に響いた。





「――――――・・・あなたと別れた後に、夢を見たわ。」
「夢?」
問い返すと、そう。夢よ、とぽつりと答えられた。
かごめは樹に背を預けて座り、籠を隣に置く。
ジズもそれを真似て座り、帽子の赤い羽根飾りを弄る。
「・・・あなたが、青い蒼い水面に立っているの」
膝を抱き寄せて、小さく小さく声を出す。

目を閉じれば思い出せる。
ほら、こんなに鮮明に。
まるで現実で起きた事の様に鮮明に。

「名前を呼んで、近付こうとしたら・・・」

風。
大きな、風。
まるで間を遮るように強い風が吹いて、思わず目を閉じた。
少し緩んだ所で、薄く目を開けた。

「―――――――・・・・鳥、だったわ」
「・・・鳥?」
ふと飾りを弄るのを止め、かごめを見つめる。
口元から、笑みを消す。
「・・・・青い、鳥だったわ」
無表情で、膝を抱えてぽつりぽつりと声を零す。
何を見つめているのかは不明だが、何処か芒洋とした瞳で。
そうして再び話し出す。
「・・・あなたが、私の青い鳥なのかしら・・」

あの夢が、本当だとするのなら。

「―――――・・・・あなたが、私の探している鳥なのかしら」
口元に笑みを戻して。
「さぁ・・・どうでしょう?」
帽子で顔を覆い隠した。





「あれ〜?ジズどしたのぉ」
「おや・・・スマイルではないですか」
きょとんとした声でジズの名前を呼んだ人物。
如何やら彼の友人らしい。ならば先ほど話していたのはこの人の事か。
「・・・・・・?そのコはぁ??」
一度不思議そうな顔で此方を見て、そうして満面の笑みに変え此方に近付きつつジズに問う。
「あぁ、彼女はかごめと言うのですよ」
「へぇー!かごめって言うんだぁ!!ねぇねぇかごめチャンって呼んで良い??」
握手握手、と手を握り振られながら。
それに多少戸惑いつつ小さく何度も頷く。

ジズの旧友と言うから、てっきりもっと落ち着きのある人物かと思っていたのに。

「・・で如何してこのコと居るのサー」
スマイルは彼を振り返り両手を広げ疑問で堪らない、と言う調子で問い掛けた。
彼はそんなスマイルを見てくすくすと笑っている。
かごめはそんな2人を瞬いて見ている。
「人の話は最後まで聴く物ですよ、スマイル」
可笑しくて堪らない。

くすくすくす。・・・くすくすくすくす。

「・・・・・・・ジズ・・」
「あぁ、はい。・・・・彼女とは先日森でお会いしたのですよ。丁度かごめが歌を歌っている所で・・その声に惹かれてね」
かごめに促された彼が、スマイルに話して聞かせる。
くす。と最後に笑うのを忘れずに。
「歌。へぇーそうなんだぁ・・」
意味深に言い、かごめに向き直る。
「じゃあ、今度呼ばれるかもね♪・・・ポップンパーティに」
にこにこと話す彼に、それは何かと聞こうとしたが。
「・・・・ではかごめ、失礼します。それではスマイル、お邪魔して行きますよ」
「えぇ!?ちょっと待ってよジズ!!起こられるの僕なんだからー!!!」
律儀に礼をして、浮かんで森の奥へ消えていった彼を、
スマイルは追いかけて行ってしまった。

かごめはそんな2人の背を、只黙って見つめていた。

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