「青い鳥の対峙」
「・・・・・・・・・・・」 ふぅ、と息を吐く。 手を額に当てて、空を仰ぐ。 彼らと別れてから、もうどれ位経ったのだろうか。 木々の隙間から漏れてくる柔らかな光は、彼女の体を優しく包む。 黒い服に、白い肌が際立って、白い花が輝いた。 「・・・・・・・・・」 そうして再び歩き出す。
「よく来てくれたっスね、ジズさん」 にこにこと愛想良く盆に乗せた紅茶を運んでくる彼はアッシュ。 どうぞ、と一言言ってそれをカップに注ぐ。 きちんと人数分。・・・・しかも均等に。 「いえいえ、此方こそ突然お邪魔してしまって申し訳在りません」 くすくすと笑って悪びれなく言う彼は幽霊紳士のジズ。 その横でばつが悪そうに足の間に手を着いてそっぽを向いているのは彼の旧友であるスマイル。 その2人と対峙して足を組んで悠然と紅茶を飲んでいるのはユーリ。 そしてスマイルとユーリは同時に同じ事を口にした。
「・・本当だ」「本当だよ・・・・・」
ぴしっと、その場の空気が固まり、アッシュは苦笑。 「2人ともそんな・・・・・」 当の本人であるジズはくすくすと笑っている。 ユーリは不機嫌そうにアッシュを軽く睨み、そうして紡ぐ。 「行き成り人の家に上がり込んできてずけずけと座りおって・・・・」 「それは失礼致しました。ですが久々に会いに来たのですから、そう邪険に為さらないで下さい、ユーリ」 くすくす。 笑って彼はユーリに劣らず優雅に紅茶に口をつける。
「ねねねね、ジズッ」 「・・・・・はい?」 未だに紅茶を飲み続けていた彼に、スマイルが話し掛ける。 ててて、と近づいて来て。何時もの笑顔と共に。 「あのかごめってコさ、キミのナニ?」 「―――――・・・・何、と申されましても。」 にぃ、と笑った彼に、ジズは小さく首を傾げて返した。 唇に微笑みを称えたまま。 そうしてカップをコースターに置いた後、瞼を伏せて問う。 「・・・・・彼女の事が気に入りましたか?」 「うん。」 あっさりと即答。 ジズは笑みを消して瞳を開く。 そうして不適に笑って呟く。スマイルの笑顔を見つめて。 「・・・・・・・ほぅ?」 「・・・って言うか・・・・・・・何?ヒトメボレって奴?」 にぃ、と笑みは深くなるばかり。 2人の笑顔は無言での対峙を続けた。
「・・・・・・・・・・・」
鳥。
・・・・が、樹から飛び立った。 それを目で追う。空高く、高く。飛んで行く。
「私の・・・・・青い鳥は―――――・・」 だれ、なのかしら。
あの青い肌の青年。 彼の事も、考えてみたのだ。否、考えてしまった。直感的に。 赤い瞳に、青い肌。青い髪。 それが、とても印象的な青年。 連想させたのは、『青い鳥』。彼に重ねたのはそれ。
「――――――――・・・・だれ・・・?」 出来る事なら、また会いたい。 彼と、彼に。 『誰』が自分の捜し求めているものなのか、知るために。
鳥が。
樹から飛び立った。
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